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 祈るように手を組んでいる。  つまり守り神として信仰の対象になっているだけだった。 「いやあ、あんなものがうろついてるなんて。世界って広くて危険だな」 「楽しいのならそれでいいけどさ」  補給を終えて、女性を家に送り届けてから。  また走り出した車内で面白くてたまらない様子のアイルに、目的を忘れるなよと釘を刺した。 「まあ大丈夫だろ。ラツィリさんだって唯々諾々と従う子には見えなかったし、何もなくても時間稼ぎとかしてるんじゃない?」 「楽観的だな。俺だってそう思うけどさ」  ただ、本当にその読みが当たっているかなんてわかるわけもない。  既に色々諦めているのかもしれない、と想定してしまうのも必要になる。  それはただの不安だけど。  暗くなった土地を道なりに進んでいく。樹木が少なく、反射もあまりないので星を見て判断する方が早かった。  月が出ていないから、それは困るんだけど。  くじらを仕舞い込んだボールを右手で弄ぶ。  開錠パスが分からないので、ローグにはそれを開くこともできないが、だからといってそこらに置いておくことができないままだった。 「俺も似たようなもんか」  よくわからないことを言って、車の制御室で座り込んだ。  アイルが眠ると言って奥の方に行ったので、ローグはその間の見張りをすることになる。  遠くの山の影と、走り続ける牛の背中を交互に見比べて。  嫌な虚無感に襲われた。  心臓の奥に空洞がある感覚、それはひどく恐ろしくて。  だから、誰かに縋りたいんだ。
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