4

4/13
前へ
/65ページ
次へ
 近くの街で、と思ったけれど。  既に立ち入り不可の区域に近付いている以上、あまり人は居ないようだった。  数千人クラスの町でさえほぼ見当たらず、百人単位の町村か集落がまばらにある範囲のようだった。  近辺で一番大きな街に立ち寄り、ローグとラツィリは別に車を借りることにした。  牛型のキャリーカートはここでアイルが見ている、と言い出したので必要なものをキャビンから移して走り出す。 「時間がないからこうするしかなかったけど……」 「逃げ出した後の様子ってどうなったんだろうな?」  ローグは乗用車にラジオか何かついているだろうと、カーナビを弄ってみた。  ラジオはあったけれど、受信しづらい。放送局からあまりに遠く、ほとんどノイズしか聞こえなかった。それでもなんとか、と頑張るより前にラツィリが「いいよ、先に進もう」と遮る。 「もう少し進むと、寄れる場所があるから」 「え……ここから先に人なんかいないのに?」 「それでも大丈夫。実はこの辺りは調査でよく来てるから、立ち寄る場所も知ってるんだ」  しばらく先に行くと、無人のモーテルがあるのだ、という。 「あまり長居はできないかもだけど。向こうもそれくらい想定してるだろうから」 「なに、ネットでも通してあるとか」 「正解。通信基地も兼ねてるから、情報はそこで得られるかなって」  …………それにしても、この辺りは随分と湿っぽいな。ローグが思っていることをわかっているのだろう、ラツィリが逐一解説を入れてくる。 「ここまで海流が近くなると、他の場所よりも湿度は高いよ。常に水が舞ってるからね」  世界中のどこよりも植物の多い土地になっている。  そして、いつまでも人類の始まりとしての場所を崩されない。  不思議な因縁のある陸地なのだ、とラツィリが感慨深く言っていた。 「それも海流のせいで森林が減ってきてるらしいけど」 「回復する見込みってあるのかな」 「水を、というか外に出ていったいくつもの元素を地球に戻さなないと、って前提もあるからね」  遠くに朱色の鳥のようなものが見える。  ヨーマンディのものなのか、自然に発生した異常な生物なのか、判断がつかない。 「ヴァーミンゴかな。それとも鳳凰かな」  ラツィリも同じことを思っていた様子だ。  鳥型となると、ぎょぐんって何だろうと考えたくもなるけれど。  最初からイルカもクジラも魚類じゃねえよ、で終わってしまう話だった。 「見つかったりしない?」 「監視カメラとかはないはずだけどな」  ヴェラグーンと違って捕食型とも言えないから、という。捕食するって、機械が何を食うというんだ、なんて疑問は言えなかった。  似たような色の鳥が、さっきまで見ていた鳥の傍に出てきて火を噴き始めたら、それは呆気にとられるしかないからだ。 「地球、中二病に罹ってねえ?」 「否定できない……」
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加