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「ルビーロールアース……」  変な寝言で意識が戻ってくる。意味を考えて、そんなもんが居てもおかしくないよなと変な同意を頭の奥で呟いた。  アラームをセットしていたはずだけど、鳴っていた記憶がない。  はて、と枕元に置いた端末を確かめると、「missed alarm 15h」と通知が出ている。 「もう寝坊でもなんでもないよこんなの」  慌てるでもなく、仕方ないとしか思えなかった。  ラツィリが視線を上げると、ローグの姿がない。熟睡している間にどこかに行ってしまうなんて、と思った瞬間にひどく不安になってしまいそうになった時に、部屋の扉を開けて戻ってきた。  身を起こしているラツィリに、やっと起きたねなんて暢気そうに声を投げてきた。 「そう言いながら、ローグはまだ眠そうだけど」 「変なもんだよ、十二時間は寝たのに寝足りない」  今までこんなことなかったんだけどな、と独り言ちている。  あまりのんびりしている余裕もないはずなのだけど、なんだか気が逸らないのも不思議だった。 「夢見が悪かったかな」 「んー……まあ、ラツィリの兄だって奴にひたすら詰られるって訳のわからん悪夢は見たけど」 「え、兄貴?」 「うん。俺の知らない範囲だから、存在するかなんてわかるわけもないのに」  ローグは確かに知らないはずだ。  幼少期も、現在でも、ラツィリの近い血縁者には対面したことはない。  拘留場で行き遭った姉が、唯一と言っていいくらいに。そして姉にしたって、近い血縁者と言えるかどうか……。  だから、そんな単語が出てきたことに単純な驚きがあったのだ。 「……どんな感じだったとか、覚えてる?」  詰るとか言われても、質というか方向性というか。  そういう風に訊いたところ、少しだけ考え込んでいた。夢の話で詳しくディティールを求めるのは変なことのように感じるけど、とラツィリは思うけど。  それでも気になってしまったのだから仕方のないことだ。 「……いや、感情的に理詰めでやってくるような……。それ聞いて何になんの?」 「んー? イメージとか確認」  イメージ? とローグは首を傾げる。 「だって、兄妹って似てるって言うでしょ? 知らない血縁ってことは、私のイメージを参照してると思うからさ」 「…………」 「口喧嘩に強いみたいな風に思ってる?」 「どうかな? 知識量で勝てないのは分かってるけど」  言い争いとかすることもないし、する気もない。言われてみればそんなイメージが持てないわけでもない。 「まあうちの兄貴は力ずくの方だけどね」 「あん? 本当に兄さんいるのか」 「苦手だけど、まあ悪い人じゃないから」  その意味はよく分からなかった、けれどなんだか枷になりそうな言いようなのが気になる。ローグに何か不利益があるのかと思った。  今はいいかとすぐに忘れるくらいの気がかりだった。
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