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 水流を受けて発電する機構。  結局は過去の時代から受け継がれる技術の延長だった。 「瑠璃くじらが海流の中で動き続けているってのも、そう考えれば無理のない話なのかな」  噴き上がる水の流れの中で、位置を変えずに居続けるくじらの姿。二人で揃って気を失うまで、機能を限界まで防護に回したくらいにぎりぎりの鬩ぎあいを続けていたのだが。  そもそもどうして、あんなことが起こっていたのか。  今は免疫のようなものという予測が出ているが、確定的なことはまだ誰にも言えないでいる。観測データを見ると、アレグリとの戦闘の後から勢いは弱まっているらしいのだが、関連があるのかも分からない。  ローグには、関係はしているだろう、なんて曖昧な確信があったけれど。 「……空の外に、排出するってことが。そういう意味なんだとすれば」  オカルトだろう。  そう言い聞かせ、仮説のままで止めておく。  どちらにしたって、それを考えるのは自分じゃない。  本を閉じて置き直すと、玄関の方からチャイムの連打が聞こえてきた。  連打、っていうか。  間がなくてほとんど一音を伸ばしたように聞こえる。なに、秒間三十回とかなのかと考えれば。 「人間業じゃないだけだな」  どれだけ放置していたのかは分からない。  それでも二分以上は絶え間なくなり続けている辺り、向こうもローグがここにいることを確信してやっているのが透けて見える。 「はいはい、いま出ますよー」  玄関へ行けば連射される音で耳が痛い。  それでもガラスの向こうからこちらを見るなり音が止んだあたりは、まだ正常なのかもしれない。  そんな所で何を測ったのかは知らないけど。  シルエットでは誰が居るのかは分からなかった。  だから、本当に無防備にドアを開けて、十秒ばかりフリーズしてしまうのだけど。
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