第3話:街の人にもお裾分け

6/7

715人が本棚に入れています
本棚に追加
/139ページ
 乙女ゲームをプレイしていた時は色んな男性キャラが登場したが、私は『王太子推し』というわけでも無かった。『箱推し』とでも言うのだろうか。  どのキャラもそれぞれ良さがあったと思う。でも強いていうなら、あのキャラとは一度会ってみたいのだが……。 「エリアナ、今何を考えてた?」 「え! あ、ごめんなさい、色々と考えを巡らせておりました」 「そう? 他の男のことでも考えてるのかと思った」 (何で考えてることがバレてるの!?)  思わず「ヒッ」と声が出てしまいそうになるが、それでは「そうです、他の男性のことを考えてました」と認めるようなものなので、務めて平静を装った。  カイ様は、揶揄うような視線をこちらに向けている。 「すみません、何を売るか集中して考えますね」 「あぁ、まずは何種類か売ってみて、反応を見ながら売るものを変えても良いかもしれないな。エリアナの負担は増えてしまうが……」 「確かにそれは良いですね。メニューは固定にせず、お客様の反応を見ながら変えていくことにしますね」  その後はひたすら生地をこねて、色々なパンを作っていった。カイ様は私のパンを作る工程を見て、改めて感心したように言った。 「パンを作るというのは、こうも手がかかるんだね。我々には魔法や魔道具があるし、こうやって手間をかけて何か作る、という考えが欠落していたような気がする」 「フフッ そうですよね。でも、こうやって無心になってパン生地を作るの、すっごく楽しいですよ」
/139ページ

最初のコメントを投稿しよう!

715人が本棚に入れています
本棚に追加