第4話:広がる幸せ、忍び寄る影

1/5

715人が本棚に入れています
本棚に追加
/139ページ

第4話:広がる幸せ、忍び寄る影

 移動販売、初日。  私たちは、朝早くから街の中心地に来ていた。 「カイ様やアンディまで、一緒に来て下さってありがとうございます!」 「エリアナ様、これまで毎日沢山練習されていたとカイ様からも伺っております。まずは初日、無事に終えられるよう微力ながらお手伝いいたしますね」 「アンディったら、そんなにかしこまらなくて良いのに」 「フフッ エリアナ様、アンディ様はとても真面目で優しいお方なんですよ」  ケイティに褒められたアンディは、照れた様子だった。二人は一緒に広報活動もやってくれていたので、その過程で少しは仲良くなったようだ。  皆が来てくれて心強い反面、本当にお客さんが来てくれるのか心配で、実は昨夜もあまり眠れていない。それに、今日は焼きたてのパンを届けるためにも、夜が明ける前にはパン生地をこね始めていた。 (食へのこだわりが薄いキアラ王国の人々に、果たして受け入れられるのかしら……)  ここまで努力してきたが、全く受け入れられないかもしれない。そんな悪い結果も頭をよぎる。カイ様が不安を察知したのか、私に声をかけてくれた。 「エリアナ、不安にならなくて大丈夫だよ。君の作るパンや焼き菓子の美味しさは、僕らのお墨付きだからね」 「そうですよ! エリアナ様。今まで食べていたものは何だったんだろう? と思うくらいには、毎日革命が起きています!」 「フフ、私は革命を起こしてしまったのかしら」
/139ページ

最初のコメントを投稿しよう!

715人が本棚に入れています
本棚に追加