第5話:異物混入騒動

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第5話:異物混入騒動

 この日もグラニットの中心部に来て、朝からパンを売っていた。  連日大盛況で沢山の人が買いに来てくれたこともあり、品数も徐々に増やしていった。その作戦がさらに功を奏したようだ。  これだけ順調に売れていれば、当面は不安なことも無い。でも、カイ様とアンディは「何かあっては大変だから」と、2人のどちらかが必ずその日の店番を手伝ってくれていた。  この日はカイ様が手伝ってくれていて、ケイティも長い列の整理をしてくれた。  残りのパンや焼き菓子も半分くらいになった頃、背丈の高いがっしりとした体つきの男性が、無言でパンを2つ買っていった。  何も話さないので少し不安になったが、目の端で様子を見ていると、すぐ近くに座ってパンを食べ始めた。 (食べてもらえればもう大丈夫かな……)  と、ホッとしたのも束の間、その男性は突然大きな声を上げた。 「うわっ! なんだぁ、このパンは!? 中に虫が入ってるじゃねーか。こんな物売るなんて、どんな神経してるんだ?」 「え!?」と私も列に並んでいる人達も驚いて、声を上げた人に視線を向ける。そして、その声の主は怒った様子で、こちらにずんずん近づいてきた。 「おい、なんだこの移動販売は。客の食べ物に虫入れて、平然と売ってんのかぁ? 舐めた真似しやがって、喧嘩売ってんのか?」 「お客様、どちらのパンでしょうか? 拝見させてください」 「アァ? 客のことを疑うってのか? これだよ、見てみろよ!!」
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