第8話:シナリオ通りにいかない世界

2/6

651人が本棚に入れています
本棚に追加
/131ページ
 アンディは『キツネ』について気になったようだが、話を続けた。 「それで……その合間も、水魔法が使える住人が退治を試みたのですが、警戒心が強いのか逃げるのが早く、なかなか攻撃が当たらなかったそうです。  それで、次の日には畑が焼けたようになっていて、収穫前の野菜を食い散らかした跡が残っていたそうでして」 「それは、きっとお腹が空いていたのね!」 「そうなんです。あの魔獣、お腹が空いていたようなんです。それにしてもエリアナ様、どうしてお腹が空いていると分かったのですか?  パンを投げたとケイティから聞きました」 「畑の辺りで匂いを嗅ぐ仕草をしていたんだけど……でも、本当にお腹が空いているかどうかは分からなかったわ。  ただ、真っ向勝負をしたら負けると思っていたから、何かで気を引くしかないと思って。それで思いついたのがパンだったの」 「なるほど……」  アンディは納得いったような、いかなかったような顔をしているが、本当に思いついたのがパンだったのだから仕方がない。   「エリアナ様が退治して気を失われた後、私もすぐにこちらに来たのですが。さらに時間が経ってから、ようやく王家の騎士がやってきましたよ。もう数日前から魔獣は現れていたというのに」 「あら、やっと来たのね! それでどうなったの!?」 「もうこちらで退治したので帰ってもらって問題ない、と帰らせました。王家はこの辺りで魔獣が出ると想定していなかったそうで、来るのが遅れたと言っていました。  全く、本当に仕事が出来ない人達です」 「全くだな。あぁ、そうだ。エリアナ、魔獣が落としていった魔石はこれだよ。君が持っていると良い」
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!

651人が本棚に入れています
本棚に追加