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「パンを売っていたと思ったら、次はこんな所まで来てレシピを配ったり魔獣を退治したり……彼女は一体何がしたいんだ……?」
この時、カイはクリス王太子の発言を聞き逃さなかった。そして鎌をかける。
「パンを売っていたと思ったら、ですか。殿下は、エリアナ嬢がパンを売っていたことをご存知なのですか?」
「な、あ、いや……風の噂で聞いたものだからな。私も婚約破棄した立場だ。復讐でもされたら困るだろう。動向は多少気にかけているんだ」
「ほう? 復讐ですか」
「そ、それよりっ! エリアナが魔獣退治に参戦していたと言うことは、カイ殿やアンディ殿も一緒にいたと言うことだろう? なぜ君たちは一緒にいたんだ?」
クリス王太子はやはりエリアナのことが好きで、ずっと気になっているんだな、とカイは改めて思った。
なら何故、婚約破棄などしたのかと思うのだが、この王太子のことだ。彼女の気を引きたかったんじゃないか、とも思い始めた。
「彼女と会ったのはたまたまですよ。なんでも料理に目覚めたそうで、各地を旅していると言っていました。
我々がここにいるのは、マリン帝国の貴族の間でもこの国の瘴気や魔獣のことが噂になっていて、不安に感じている者が多いからです。
国際問題に発展する前に、自分の目で現状を確かめに来ました」
「なっ……マリン帝国でもそこまで噂になっているのか……」
クリス王太子が青ざめた顔をしている。隣にいた聖女マリアも自分が何もできないからか、落ち込むような、沈んだ表情をしていた。
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