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あの奇妙な夜から数日が経った。結局医者には行ってないけど、頭、またはそれ以外のどこかが痛むこともなく、私は普段通りの生活を送っている。
会社もだ。汐見さんが抜けて忙しくはなっているけどいつも通り。唯一、枡田くんを除いて。
どうしたのか、最近の枡田くんはミスが多い。今日も何か間違えたらしく、原さんに「すみません」と謝っている。今までそんなこと全然なかったのに。ていうか彼、むしろ慎重すぎるほど慎重なタイプなのに。大丈夫かな、疲れてるのかな。なんて、なんとなく見てたら微かな違和感に気がついた。
おかしい。枡田くんが持ってるあのマニュアル、だいぶ昔のやつな気がする。
よくよく見れば間違いない。制度改正があったからマニュアルも去年刷新したのに、表紙に小さく書かれた作成年度が平成になっている。
でも枡田くん、新入社員なのに何であんなの持ってるんだろ。データは削除したし、紙も全部処分したのに。原さんも気づいてるはずだ。だって一緒にシュレッダーかけたもん。「何このマニュアル、平成てか昭和じゃん。役に立たねー」ってゲラゲラ笑ってたもん。
そこまで考えてピンときた。いや、きてしまった。
やばいわ、これ。つまり原さんがまたやってるってことじゃない?枡田くんにわざと古いの渡してない?枡田くんは疲れてるんじゃなくて、原さんに憑かれた。もとい目を付けられたんじゃない?って。
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