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「瑠奈……」
「るにゃ?辞めた方のお名前でせうか」
「いえ、瑠奈は子供のときの友達です。私、昔ちょっと嫌なことあって、その時に助けてくれたのが瑠奈でした」
痛みを紛らわすために猫と話しながら私は鼻の付け根を揉む。
瑠奈と私は住んでいるマンションも保育園も一緒の幼馴染で、小さい頃はよく遊んでいた。でも仲良しだったわけじゃない。趣味も興味も違うし。
実際、仲が良かったのは私たちよりも親同士だ。小さい頃はおそろいの服を着せられたり、家族みんなで一緒に出かけることもいっぱいあって、喫茶店のシャノアールに行ったのもその時だった。
小学二年生の夏休みに海へ行った帰り。うちのマンションは駅から近くて、「喉かわいた」って騒いでもいつもなら家でお茶飲めって言われるけど、その日ばかりは親もクタクタだったらしく、シャノアールに寄ったのだ。
私と瑠奈はひとつのジャンボパフェを二人で夢中になって食べた。いや、夢中になってたのは私だけかも。瑠奈はいつもお行儀が良かったから。
口の周りをクリームだらけにして怒られる私とは対象的に「シャは猫って意味なんだよ。ノアールは黒」って、澄ました顔で長いスプーンをひらひら口に運んでいた。
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