いつも行くコンビニ

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 今さら彼がコンビニの彼だからって理由で追い返すわけにも行かず、と言うか、そんなの理由にならないので、高藤葵と言う男を部屋に上げてしまった。  そんな高藤葵はローテーブルの前に座って、私が入れた麦茶をお礼を言ってから飲んでいる。その隣で私はプルタブの空いた缶ビールを口にしようとして、自分だけ飲むのもと言う気持ちに駆られる。 「ビールいる?冷蔵庫にまだあるの。」 「せっかくだからと言いたいところだけど、ダメですよ。俺、まだ20歳になってないんで。」 「へっ?」 瞬きを何度かした。自分より若いのは明らかだが、大人びた顔はしている。でも、20歳になっていないってことは…… 「葵くんは19歳なのかな?大学1年生?」 今度は葵くんが状況を把握するかのように、瞬きを何度かした。 「もしかして俺のこと何も知らないんですか?」 「うん。今朝、山野に頼まれて、いいよって即答したから。あなたが山野の親戚で危ない人でないこと以外は知らない。」 「……信じられない。俺はてっきり恵大さんがあなたにきっちり情報を伝えて承諾したと思ったのに。」 葵くんはリュックサックからパスケースを取り出して、私に差し出した。二つ折りのそれを開けたら、中に顔写真入りの学生証が入っていた。 [星条高校 3年5組 高藤葵] 星条(セイジョウ)と言えば市内でも有名な私立の進学校だ。そんなところに通えるなんて、葵くんって優秀なのね……
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