いつも行くコンビニ

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「って、高校生!?嘘っ!?」 思わずパスケースを握りしめてしまう。 「山野のやつ、高校生なんて言わなかったわよ!!」 いや、もしかしたら言ったら私が断ると思って伏せたのかもしれない。 「明日、絶対にあいつを問い詰めて吐かせてやる……って、明日は仕事休みじゃん!!」 もうやだ。てか、今日、私、高校生に助けられたんだ。いい大人が情けない。 「……ねぇ、星条なんかに通うお坊ちゃんが、髪の毛を染めて、コンビニでバイトなんてしていいわけ?」 コンビニにいる彼は、申し訳ないが星条高校に通う高校生とは思えない。 「星条は校則のない自由な学校です。成績に支障をきたさないなら、毛染めもバイトも許されています。それから、俺は別にお坊ちゃんではないですよ。」 そう答えて、葵くんは寂しそうな瞳で微笑する。 そして、私からパスケースを受け取り、リュックを肩にかけて立ち上がる。 「……どこ行くの?トイレなら出て左側だけど。」 「違いますよ。あなただってまさか高校生と同居するなんて思っていなかったでしょう。」 もしかして…… 「出て行くつもり?」 「はい。見ず知らずの高校生を家に置く勇気がありますか?例え俺も恵大さんもあなたも良しだとしても、そして2週間だとしても世間からしたら有り得ないことです。それに、学校も俺の親もこのことは知りません。」 彼は誰にも言わずここに来た。 確かに親に相談すれば、別の住まい、例えばホテル暮らしとかを手に入れることはできたかもしれないのに。 どうして? 「……これからどこに行くの?」 「別に2週間ぐらいなんとでもなります。ネカフェもあるし、24時間やっているスーパー銭湯とかもあるし。」 「でも、誰かに声をかけられたら……」 星条の生徒がそんな家出みたいなことしているなんてなったら、さすがに学校は退学になるんじゃ…… 「こんな形なんで、高校生に思われることは少ないんで。」 淡々と話す葵くん。今までもずっとそうして生きてきたと言うような口振り。山野が葵くんのことを大人しいやつと言ったのは、家賃のためにただ間借りをさせていただけで、彼の本当の気持ちを知らなかったからなのではないだろうか? きっとこの子はここを出ても生きていける。一人で自分の足で。でも……
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