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「待って!」
彼の手を掴んでいた。
「ここにいて。」
「えっ?」
「お礼がしたいの……今日、コンビニで助けてもらったから。」
「……。」
「葵くんが高校生だとは思ってはいなかったけど、追い出したくはない。私は世間とかそう言うのに興味はない。」
母が亡くなった時に、私は手に入れたのだ。
孤独を。
頼れる血の繋がりはもうないこと。
血の繋がりが何だと言う人もいるかもしれない。
他人の方が信用できると言う人もいるだろう。
でも、他人は、友人であっても彼氏であっても同僚であっても、たまたま点が線になって繋がっただけで、また点になることはあるのだ。
「……名前、なんて言うか教えてください。」
葵くんが肩にかけていたリュックサックを下ろして、私の前に座り直した。
「……羽山栞菜。美容師をしているの。あのコンビニから少し行った美容室で。」
「じゃあ、2週間よろしくお願いします……栞菜さん。」
……笑ってくれた。
どうせ最後は点になるなら、2週間だけこの子と線になってもいいと思っている。
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