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2週間でも一緒に暮らすとなれば、暮らすなりのルールが必要となる。私はローテブルにA4サイズの白い紙をおき、黒ペンを握ろうとして葵くんに渡した。
「ごめん、書いてくれない?」
「右手、そんなに痛むんですか?」
「無理できないのよ。鋏を握れなくなったら、私は仕事を失うわ。」
「……。」
葵くんはそれ以上は何も言わず黒ペンを右手で持ち、左手でペンのキャップを外してから、左手に持ち替えた。
「葵くんって左利きなの?」
「はい。生まれた時から。」
「そうなんだ。」
「それでどうしますか、ルール。」
そう、今はお互いに平和に暮らすためのルールを決めることが先決だ。
「ちなみに、葵くんは掃除が得意?」
私は普通だが掃除機をかけるのは好きではない。
「まぁそれなりにはします。恵大さんが掃除をしないので、俺がしていました。」
「よし、じゃあ君は掃除担当だ。その代わりに私が洗濯ね。一緒に洗濯した方が節約になるでしょ。」
洗濯は好きだ。青空の下で洋服やタオルを干している時間は、自分も洗われて、浄化される気持ちになるのだ。
「待ってください。洗濯担当って……あの……」
葵くんが俯いて口籠る。
もしかして……
「下着のことを心配してる?大丈夫!男子高校生の下着を洗うくらい何とでもないから。」
そんなの大したことじゃない。男物のパンツなんて見ても興奮なんてするわけもない。
「俺が……俺が気になります。」
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