初日から色々ダメなんですけど

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そんな風に頬を染めて言われてしまうと、男子高校生のピュアな気持ちを、もう人生の酸いも甘いも噛み分けかけている30歳手前の女が踏み躙ってはいけない気持ちになってしまう。 「じゃあ、一緒に洗濯はするけど、君の下着はなるべく見ないようにして、タオルに包んで、洗濯カゴに戻すようにするから自分で干して。それで取り込む時も取り込むだけにするから、自分で畳んで仕舞うようにしよう。」 「……それならなんとか……」 ちょっとまだ物申したそうな顔をしていたが、自分は間借りしている身と弁えているようで、葵くんはこの提案を飲んでくれた。 「私用と葵くん用の洗濯カゴを用意しておくから、取り入れた物は別々にして、そこに入れるようにするね。」 「ありがとうございます。」 葵くんは滑らかなペンの運びで、[掃除]と書いて、その横に少し間を空けて自分の名前を、そして、[洗濯]の文字を書いて、その横には私の名前を書いた。 「次は食事だけど……」 思わず彼の顔を見る。彼にとって私は料理の一切できない社会人に映っているに違いない。ほぼ毎日、コンビニに寄ってご飯とお酒とお菓子を買って帰っているのだから。 「俺のことは気にしないでください。栞菜さんは栞菜さんのしたいようにしてください。」 思った通り彼には私が料理をする社会人には映っていないようだ。でも、その方が有難い。やはり自分の暮らしを大きくは変えたくはないのだ。 「そう?じゃあ食事は各自で。お風呂は時間制にしようか。先に入ってくれていいよ。その代わり22時半までには終わらせて。バイトもあるけど大丈夫?」
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