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「大丈夫です。バイトは21時までなんで。」
葵くんは返事をして[入浴時間]と紙に書いていく。
「朝は早いの?」
ここから星条なら自転車で通える距離だ。
「8時前にここを出れば間に合います。」
「自転車?」
「はい。店長にお願いをしてコンビニに置かせてもらっています。朝に寄って乗って行きます。」
「分かった。私よりも葵くんの方が先に出ることになると思うから、洗面台なんかは気にせずに先に使ってね。」
そうして、私たちは2週間暮らすには困らない程度のルールを決めた。お互いのプライバシーには干渉しないなどと言ったことも約束をして。
「葵くんの部屋なんだけど……」
1LDKの賃貸だが、彼さえ良ければ住めるところがある。
私は彼とリビングを出て、玄関までの廊下の途中にある引戸を開けた。
そこは4畳ほどのスペースのある納戸で、部屋の奥に少し大物の荷物が置いてある以外は何もなかった。
「ここで寝泊まりぐらいはできるかなとは思っているんだけど。来客用の布団はそこのを貸してあげる。」
私の指差した先に扇風機の下敷きになった、圧縮袋に入った布団がある。
「ただ机がないのよね。」
学生なので勉強するためには机がいるはずだ。
「明日、コンビニの店長に聞いてみます。あの人、物を捨てられないタイプらしくて、けっこう何でも持ってるんで。」
さっきからちょくちょく話に出てくるコンビニの店長。葵くんはもしかしたら、家族よりもこの人を頼りにしているのかもしれない。
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