初日から色々ダメなんですけど

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 その晩、彼はルール通り私より先に入浴や歯磨きを済ませ、持ってきていた荷物を片付け、私に「今日はありがとうございました。おやすみなさい。」と言って、自室になる納戸へと引き上げていった。 だから、私も「おやすみ。」と言って、いつも通り就寝前の支度を済ませて床に着いた。  そうして迎えた翌朝に、私はダイニングテーブルの前で固まることになる。 起きたのは9時過ぎ。葵くんのために早起きする必要はないし、相手も望んでいないだろうから、いつも休みの日に起きる時間に起きた。 薄ピンクのパジャマのままリビングダイニングにのろのろとやって来たら、ダイニングテーブルにオムレツとウィンナー、それにクロワッサンとサラダがある。 [住ませてもらうお礼です。もし良かったら。いらなかったら冷蔵庫にしまっておいてください。] と、彼の字で書いてある。 料理できるんかいっと突っ込みながら、彼の残したメモを手に取る。 綺麗な字。私なんか今だに子どもっぽい字なのに、きちんと社会に出て働けるぐらいの文字を書く。 自分の食べた物はきちんと洗い、水切りのカゴに伏せてある。洗面所に行ってみたら、私物をそのままにすることもなく、使ったあとに部屋にまた戻した様子が伺える。 「完璧過ぎるよ。」 育ちのいい子なのだろうと思う。そんな子が自分の家で暮らさないのはなぜなのだろう。どう見ても星条高校にすごく行きたかったからと言う感じもしない。寧ろ、家を出るために、親に文句を言われない学校として、星条高校を選んだように見える。
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