初日から色々ダメなんですけど

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****  その後のことを私はあまり覚えていない。ううん、茉莉と飲んでいた時の記憶は後半途中ぐらいまではある。 茉莉とはいつもそうだが、お互いにそれはもうよく飲む。だから、いつも行く居酒屋はお洒落とは無縁のお酒も食べ物もリーズナブルなお店だ。 そして、私はいつも後半は酔いが回ってへにょへにょになる。へろへろとは違う。へにょへにょ。誰かに引っ付きたくなったり、急に笑い上戸になったり、同じ話を3回ぐらいしたり。 もちろん記憶はない。だけど、友だちに言われるからそうだと知っている。「面白いからいいよ。」「泣き上戸とか説教しまくるとかじゃないし。」「なんかその時だけは可愛い栞菜を見れるって感じ。」と、友だちは温かく見守ってくれている。 そしてそんな時の最後のお世話係は茉莉なので、茉莉はその日も慣れたように、酔った私と一緒にタクシーに乗って家まで送ってくれた。  「ほら、栞菜、家の鍵貸して。」 タクシーを降りて、エレベーターで4階まで上がって、茉莉はいつも通り、私に鍵を渡すように言う。だから、私は鞄から鍵を取り出して茉莉に差し出す。 「ありがとう!茉莉大好き。」 と、言いながら。もちろん記憶はない。 「いいわよ。今日は付き合ってくれてありがとう。帰ったら涼介のことは許すわ。」 そう言って、鍵を回して玄関の戸を開けた茉莉は「えっ?」と、声を漏らした。
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