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私は茉莉が帰った後も葵くんに抱き付いていたけど、葵くんから
「栞菜さん、ダメです。」
と言って、私を引き離した。
「はぁい。あ、葵くん、プリン食べた?」
「食べました。美味しかったです。ご馳走様。」
「ふふっ。良かった。」
そうやって葵くんと話しながら、二人で流れでリビングダイニングに入る。私はそのままソファーにダイブする。
「栞菜さん!」
「ふふっ。ソファーふかふかで気持ちいい!ふふっ……あはは!」
「な、なに!?」
「ふふっ、あはは……」
「何がおかしいの……ってこれが笑い上戸ってやつか。」
葵くんはどうしたものかと言った顔をして、私の方を向いて、ソファーの前に腰を下ろした。
「水、いりますか?」
「お水?いる!葵くん、プリン食べた?」
「……食べました。美味しかったです。」
「ふふっ。そう言ってもらえて嬉しい。葵くんの作った朝ご飯もすごく美味しかったよ。」
「それは良かったです。水、とってきますね。」
冷蔵庫が開く音がして、葵くんがコップに入った水を持って来てくれる。
「ありがとう。」
体を起こしてからお礼を言って、受け取って、一気に飲み干したら、葵くんがすぐにそのコップをローテーブルに置いてくれた。
「葵くんって働き者だね。」
「だって、栞菜さん、酔ってるでしょ?」
「酔ってない、酔ってない。普通だよ。」
「……どこがだよ……。」
「葵くん……」
「何ですか……って……」
私はソファーから葵くんの胸に向かって飛び込み、再び抱き付いていた。
「葵くんの体温、気持ちいい。」
「栞菜さん!」
「この匂いも……」
なんだろう。すごく安心する。こんな感覚、もうずっと忘れていたような……
「栞菜さん、ダメです。」
「やだ。離したくない。だって、こんなに心地良いのはお母さんが生きてた時以来だもん。」
「……。」
引っ付いたままの私の背中に、葵くんの手がゆっくりと回る。
回る……
回る……
……
「栞菜さん!?嘘!?寝てるし……。」
葵くんは困ったように溜息を吐く。
「なんか大人って大変だね。色々と。」
もちろん何も知らない私。
その後、葵くんが私を抱き抱えて部屋に運んでくれたことも。
メイクだけは落としてくれたことも。
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