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「おはようございます。大丈夫ですか?」
食事の手を止めて、私に挨拶をする葵くん。
「おはよう……って違う!あの、昨日、私……」
「……。」
葵くんがなんとも言えない顔をする。その顔で全てを悟った。
「ごめんなさい!!」
もうその場に土下座。
「ちょっ、何してるんですか!?顔あげてください。」
葵くんが慌てて椅子から降りて、私の前にしゃがむ。
「だって……絶対に迷惑かけたよね?」
「別に迷惑なんて……あの、もしかして昨日のこと覚えていないんですか?」
「うん。綺麗さっぱり。」
「信じられない……」
信じられない
その言葉、絶対に呆れてるじゃん。いい大人がって。そりゃ星条高校に通う葵くんから見たら私なんてクズみたいな大人にしか映らないのは分かるけど。
「もう二度と迷惑はかけません。ごめんなさい。」
口から消え入りそうな声で謝罪の言葉を述べて、私はふらふらと立ち上がった。
「栞菜さん?」
「支度があるから。本当にごめんね。」
キッチンの戸棚を開けて、市販の頭痛薬を二錠、口に放り込み水で流し込んだ。
葵くんの顔を見れるわけもなく、リビングダイニングからお風呂場へと向かった。いやもう、本当に可能なら消えてしまいたい。
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