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「信じられない」と口にしたけど、葵くんは朝食を食べる私に「いってきます。」と言ってから家を出た。だから私も「いってらっしゃい。」と口にした。
昨日は学校に行く時も帰ってくる時も彼に出会わなかったので、彼の制服姿を見るのは初めてだった。左胸に校章の入った白いシャツに紺色のパンツ。暑いからこのスタイルだが、確か星条は学ランだったはずだ。秋後半から春先はシャツの上にジャケットを羽織るのだろう。それから黒いリュックサック。この家に来た時に背負っていた物だ。学校指定の鞄はないようだった。
学生さんなんだなぁとしみじみ思い、今日、山野に会ったら、高校生だなんて知らなかったと文句を言ってやろうと心に決めていた。
「おはようございまーす。」
始業の打ち合わせ10分前にサロンに姿を現した山野の腕を引っ掴んで、入ってきたばかりなのに、彼を外に連れ出した。
「なんすか?」
「なんすかじゃないわよ!あんた、どう言うつもりよ?」
「どう言うつもり?」
首を傾げる山野。頭の上に大きなクエスチョンマークを浮かんでいるように見える。
「葵くん!高校生なんて聞いてないわよ!」
その一言を言い放ったら、山野は両手を合わせて「すみません!」とすぐ謝罪した。
「だって、高校生だなんて言ったら、羽山さん、絶対に断ったでしょう。」
「そりゃそうでしょ!!」
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