初日から色々ダメなんですけど

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「羽山さんが断ったら、あいつ行くところがない気がして、可哀想な気持ちになったんすよ。」 山野は生き物とかを見捨てられないタイプだ。うちの美容室の責任者には内緒だが、サロンの裏口に時折やってくる野良猫に、ご飯をあげていることがある。冬には段ボールで小屋みたいなものを作っていた。 「でも、あいつは全部知ってて、羽山さんの家に行くことを選んだんですよ。」 「えっ?」 「羽山さんが俺の同僚で、女性で、葵の働くコンビニの近くに住んでること。それから彼氏もいないから、一緒に暮らしても揉め事にはならないことも。」 彼氏がいないってそんな情報まで流したわけ!? 「俺も葵は無闇矢鱈に女に手を出すようなガキじゃないことは分かっていたし、訳ありなんだろうなぁってなんとなく思っていたから、それならきちんとした人に預けたいと思ったんです。」 「それで私?」 「だって俺の中で羽山さんは素敵な先輩っすよ。たまに血の気が多いですけど。」 たまに血の気が多いってなんだよと思いつつ、山野の真剣な顔を見たら、素敵な先輩と思っているのは嘘ではないことを感じた。 「だから、葵にも伝えました。安心して頼っていいよって。」 「……。」 安心して頼りに来た結果が昨日のあれだなんて。なんかもう合わせる顔がないよ。私、どれぐらい葵くんに迷惑をかけたのだろう。
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