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家に帰って適当に手洗いとうがいを済ませて自室に引き籠る。彼のシフトからして21時過ぎには家に着くので、あと20分ぐらいで帰ってくるはずだ。リビングダイニングにいれば必然的に出会ってしまう。気まずい。気まずい。気まずい。てか、なんで逃げたんだ?普通に「お疲れ様!」とか言えば良かったのに。
自室のベッドでスマホ片手に悶々としていたら、玄関のドアが開く音がして、それから数分後に部屋のドアが優しくコンコンと鳴った。
「栞菜さん、起きてます?」
「う、うん。」
「話したいことがあるんですけど、出てきてもらえますか?」
「……。」
ここで出なかったら、完全にこの気まずさの修復は不可能。
のそりとベッドから降りて、ドアを開けたらまだ制服姿の葵くんがそこにいた。
「……おかえり。」
「ただいま。」
否応無く目が合ってしまう。
目が合ってあれ?と思う。私を見つめる葵くんの瞳は、決して私を馬鹿にしているわけでも、蔑んでいるわけでもない。
「栞菜さん、俺に出て行って欲しくなりましたか?」
「えっ?」
寧ろどこか寂しげだ。初めて会った時に、この家を出て行こうとした時と同じように。
「いえ、朝から様子が変だから。さっきもコンビニの前で俺のこと避けたでしょ?」
「それは……。」
「あの、勝手にメイクを落としたりしてすみませんでした。そう言うのが嫌だっだなら、はっきり言ってくれたら……」
「違う!!」
勝手にメイク落としたりしてすみませんでしたって、何を言っているのよ?そう言うのが嫌だったのはそっちでしょう?
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