いつも行くコンビニ

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 家に辿り着いて、鍵を閉めたら、さっきのことがありありと脳裏に蘇ってくる。もうあのコンビニ行けない!!って一瞬思うが、すぐにそんな考え消し去ってしまう。たかが荷物を落としたからなんだって言うのだろう。彼の対応からしてもあんなこと日常茶飯事に違いない。  冷蔵庫を開けて、買った物を入れてからシャワーを浴びるために寝室に着替えをとりに行く。1LDKのこの部屋は一人で住むには十分だ。リビングダイニングもそれなりの広さはあるので、食卓にソファー、ローボードもおくことができた。  今の美容室に雇われてからは、ずっとここで暮らしている。実家はもうない。母と私の二人暮らしだったが、母は5年前に病気で亡くなり、住んでいた賃貸は引き払った。父はいない。いや、いたのかもしれないが、母は未婚でわたしを産んで育ててくれたのだ。私と同じ美容師という仕事をしながら。母は自分で美容室を経営していて、闘病のために病院暮らしになるまで、お店に立っていた。  母が亡くなって、私はその美容室を継ぎたかったけど、専門学校を出て2年の私にその力はなかった。だから、涙が出るくらい悔しかったけどお店は手放して、専門学校の伝手で、今は[mio]で働いている。  いつか母の店を取り戻したいって思いを持つ時もあるけど、今の私にその余裕はない。体力的にも精神的にも。母に申し訳ない気持ちを胸に抱えて眠るだけだ。
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