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次の日も9時に出勤をして、9時半にオープンする美容室の開店準備に勤しむ。予約の確認、飛び入りの客への対応は誰がするかなどの打ち合わせを行う。基本は飛び入りは断るのだが、予約が空いている時間ならオーケーすることもある。
「羽山さん、ちょっといいですか?」
開店準備が粗方整ったところで、山野に声をかけられる。
「何?」
と、言いながら、山野が周りの目を気にしているので、みんなの目につかないように、店のドアを開けて、彼を外に連れ出す。
「お願いがあるんです。」
山野がこれでもかってぐらい頭を下げる。
「お願い?」
用事があって、早く上がりたいから、予約の客を代わって欲しいとか?指名のない予約なら、個人交渉で変わることも可能だ。
「預かってもらえませんか?2週間程。」
「預かる?って、何を?」
預かると言えば想像が付くのは犬とか猫とかのペットだけど、山野ってペット飼ってたっけ?
「えーと……その……人……です。」
「人!?」
人だと!?何を言ってるんじゃ、この男は?
「あんた、何言ってんの?」
「すみません。分かってますよ、変なこと言ってるって。実は俺、今、親戚の子を預かってるんすよ。でも、明日から海外に留学に行っていた彼女が帰ってくるから、どうしてもそいつがいると困るんです。」
「じゃあ、家に帰せばいいじゃない。」
「それが無理なんすよ。自宅からは通えない学校に通っているらしくて。」
学校ってことは大学生?
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