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「ねぇ、そもそもどうして一緒に暮らそうと思ったわけ?」
「同棲していた彼女が留学に行ってちょっと寂しかったのと、一緒に暮らしてくれたら毎月10万振り込むって言われたんで、これなら彼女が負担していた家賃も払えるなって。」
山野がその子を引き取った理由は理解できた。ままある話だ。でも……
「それで私のところに送り込むって言うのが意味不明なんですけど。」
だって、他人だよ?他に頼る人いないわけ?
「俺の周りの友だちはあまりこの辺りには住んでいなくて、住んでても親戚の子を預けられるような暮らしのやつも少なくて……色々当たったんですけど、断られたんです。かと言って、ホテルとかにしばらく泊まっておけとも言いにくいし……俺の中で羽山さんは頼れる姉さんなんです!!他の同僚よりも話しやすいし!!」
それは私も感じている。山野は私にはこんなのだが、他の同僚にはけっこう気を遣っているところがある。美容師って技術の仕事だから、お互いにライバル的な面がある。決して仲が悪いわけではないのだが、同じ店舗だとめちゃくちゃ仲良くなるわけでもないっていうか。
「分かった。」
頼れる姉さんと言われて断れない。
「まじっすか!ありがとうございます!大人しいやつだし、自立もしてるんで、迷惑をかけることはないんで。」
「ねぇ……」
気掛かりなことは先に聞いておこう。
「あんたと暮らしてるぐらいだから、その子、男の子よね?」
「そうです。あ!やっぱりダメですか?彼氏が怒りますか?」
「怒らない、怒らない。てか、彼氏いないから。」
彼氏なんてものはもう4年近くいない。と言うか、作る気になれない。
「すみません。余計なこと言って。」
「気にしないで。私も気にしていないから。」
私は山野に家の住所を教え、20時半にそこで待つように彼に話しておいてと伝える。山野が「同行しましょうか?」と聞いてきたが、彼女を迎える準備もあるだろうし断っておいた。
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