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地獄のような1日を終えて、なんとか帰路に着く。今日は日曜日なので、明日はお休みだ。コンビニで好きなもの買い込んで、家でごろごろしようっと。そう言えば……昨日……いい、いい!関係ない!けど……
美容室のトイレでメイクと髪を直す。外ハネのボブヘアーをワックスで整え直して、口に明るめのグロスを塗る。ファンデとチークを塗り直して完成。仕事終わりに完璧は変だから、それなりだけど、綺麗めな状態にもっていく。
そうしていつも通り20時過ぎにコンビニの前に辿り着く。この時間には珍しく、店の前に黒い改造車が一台止まっている。そして、その前に3人の若い男が座っている。金髪、赤髪、緑髪と、3人でトリオでも組んで、一芸でもするんですかと言いたくなるぐらいにばらばらの髪色をした男たちだ。
彼らの横を通り過ぎてコンビニの中に入ろうとした矢先、
「お姉さん、どこ行くの?」
と、声をかけられた。
いやいや、どう見てもコンビニだろって言いたくなるけど、返事をしたらややこしいのは明らかなので、スルーする。
「えっ?シカト?寂しいんだけど。」
金髪が立ち上がり、私の前に立ちはだかる。
「お姉さん、綺麗だね。」
職業柄、華やかにはしているところはある。さっきメイクを直したので、今日は尚更だ。服もタイトなジーパンに裾の短めのTシャツを着て、今日はヒールのあるパンプスを履いている。
「そこ、どいてください。」
面倒くさい。
「ちょっとお話しようよ。」
「急いでいるんで。」
面倒くさい。
彼の横をすり抜けようとしたら、ぎゅっと右手首を掴まれた。掴まれた瞬間に電気、いや稲妻が走った。
「いたっ!痛いっ!」
「えー?そんなに強く握ってないよ?」
分かってる。それは分かってるけど……
「いたっ……」
「手を離して欲しかったら、俺らとお話しよう。」
だから!面倒くさすぎる!!
でも……このままじゃ右手……
「お客様、店の前でそのような行為は他のお客様のご迷惑にもなるので、お辞めください。」
がっと私の左手首が取られ、引っ張られる。その弾みで男は私の手を離した。
見上げるとそこにあの銀色の髪をした男の子が立っていた。
「何だよ、兄ちゃん。俺らはお客様だよ?」
「そうですね。でも、この行為とあなたたちがお客様と言うのは関係ないのでは?」
「……何を偉そうに……」
「ちなみにお客様、先ほどここでお酒を購入されて、3人とも飲んでいらっしゃいましたけど、誰が今から運転されるのですか?」
「……。」
「あ、警察が来ました。」
「てめぇ…もしかして通報したんだな!?」
「さぁ?ただ、従業員としては店と他の大切なお客様を守るのが仕事ですから。」
彼は怯むことなくそう言うと、私に「行きましょう。」と言って、左手を持ったまま店に入り、そのままレジの中を通って、バックヤードまで歩いて行った。
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