プロローグ

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「いつもテストで二位の人だね。あなたも忘れたんだ。これ薄いから教科書の下に埋もれてたんだ」 そう言いながら宮園さんは教科書をほとんど残したままカバンを閉める。 「教科書や問題集は持ち帰らなくていいの?」 宮園さんはきょとんとした顔で答える。 「家から学校に持ってくるのも面倒だし、忘れたら困るでしょ?」 どうやら本当に家で勉強なんかしないらしい。僕はずっと聞きたかったことを聞いた。 「宮園さんいつも一位だよね? 自習なしでどうやったらそんなに点数がとれるの?」 宮園さんはうーんっと困ったように斜め上を向いてから言った。 「分からない、でも集中したら授業で聞いたこととか色々出てきて解けるかな」 僕がこの学校で今まで解いてきた問題はどれも事前に勉強し、当日も考えに考えて解ける問題たちだった。それをそんな風に感覚で解いてるなんて信じられない。それこそ脳の構造が違うのではないかと思ってしまう。 僕はある提案をしてみることにした。 「宮園さん、良かったら僕の勉強仲間になってくれないかな」 近くで一緒に勉強すれば秘密が分かるかもしれないと思った。もちろん初対面でこんなお願い断られるかもしれないとは思ったけど。 「私は全然構わないよ、こうやって同じ忘れ物したのもなにかの縁だしね」 「ありがとう、これからよろしく」 「うん、よろしくね」 こうして僕は宮園さんと取り敢えず関りを持つことが出来るようになった。
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