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僕はふてくされたように言って、ハンバーグと白米をガツガツと口に運ぶ。その様子を見た母は半ば呆れたような表情になって言った。
「また宮園さんのこと、いいじゃない勝ち負けにこだわらなくても」
「いいや、僕は宮園さんの背中を追い越すために勉強してるんだから」
母は溜め息をついて、やれやれと言った感じでこんな投げかけをしてきた。
「その、宮園さんとは話したこととかあるの?」
「いや、全くない」
言われてみれば中学に入ってから勝手にライバル視していたけど、関りは全くなかった。主に僕のプライドの問題で。
「敵を知らずに勝つことなんて出来ないじゃない」
「確かにそうなんだけどさ」
母は僕にフォークを向けて言った。
「高等部で心機一転、まずは宮園さんと関わりを持ちなさいそうすれば見えるものもあるでしょう」
「分かったよ、なんとかしてみる」
──自室の電気を消してベットの上で考えていた。そもそも宮園さんは皆の憧れの的で対する僕は内気なガリ勉男子という立ち位置だ。関わりを持つことなんて出来るのか、しかし僕がどれだけ努力しても到達できない宮園さんの勉強法を聞き出せれば、一矢報いることが出来るかもしれない。
(まあ頑張ってみますか・・・・)
──高等部は中等部の隣にある校舎で見た目はコンクリート造りの一般的な高校と同じだ。僕は学校までの桜並木の道を自転車で走る。僕の髪は目に掛かるかギリギリの長さなので、こうして風に揺られると目に入らないか心配になる。
校門の前で自転車を降りて、自転車置き場に向かおうとした時だった。背後から背の高いメガネを掛けた男子が話しかけてきた。
「おはよう、こうして高等部でまた明に会えて良かったよ」
そういって肩を組んでくる男子は世良祐樹、全国校内どちらの模試も四位をマークしている秀才だ。僕の勉強仲間である。
「ああ、僕もだよ高等部でも仲良くしてくれ」
「もちろん、今度こそ俺が明を抜かしてみせる」
「その前に三位の鮎川を抜かないとな」
そう言うと祐樹はガクッと肩を落として言った。
「あいつの壁はマジで厚すぎるんだよ・・・・」
そんなことを話しながら僕たちは昇降口付近で別れた。自転車置き場に着くと数人の女子と宮園さんが挨拶していた。宮園さんは眠そうな顔をしながら挨拶をしている。
(宮園さんはいつもあんなに眠たげなんだろうか・・・・)
僕は人気者の宮園さんはもっと明るい女子なのだろうと思っていた。中等部の時は教室が別だったので、たまに見かけるぐらいだったからちゃんと宮園さんを見るのは初めてかもしれない。
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