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光に包まれて勇者たちの姿がなくなってすぐ、クリスはドカッと椅子に腰かける。
「あー、疲れたー」
先ほどまでの威厳はどこへやら、行儀悪く背もたれにおっかかる姿は一国の王らしくない。
「行儀悪いですよ、クリス様」
クリスの髪を持ってきた側近は、顔をしかめて諫めた。
「だってさあ」
「だってではありません。今、私しかいないとはいえ、仕事中でしょう。まあ、疲れるのもわかりますが……」
この側近は戦闘は専門外なので勇者と対峙している間はほとんど別室にいたが、そのやり取りは聞いている。
「毎回毎回、濡れ衣ばかり着せられるとほんっとイヤになるよ」
クリスは愚痴を言い始めた。
「今回は日照り、前回は洪水、ああ、台風の時もあったな。なんで自然災害を僕のせいにするんだろう? そのうち人間の国の増税や汚職まで僕のせいにしそう」
だいぶ荒れているな、と側近は思う。
普段のクリスは仕事中にここまで素になることはない。まぁ、あんな理不尽なことを言われれば当然かもしれないが。
とはいえ仕事はまだまだあるため、いつまでもおしゃべりしているわけにはいかない。
「さて、避難させた住民たちはどうします?」
「……順に戻ってもらって、盗難や器物損害の被害がある場合は届けるよう指示して。場合によってはこちらで補償する」
愚痴を言ったことで少し気が晴れたのか、クリスは座り直して指示をした。
「勇者の被害をこちらで補償ですか……」
「仕方ない。あれは一種の災害みたいなものだ。対策や避難をしたからといって、完全に防げるものではない」
素の口調から仕事の時のものに戻して、クリスはしみじみ言う。
側近は納得していないながらも、渋々頷いた。
「わかりました。そのようにします。
……そういえば、今日、勇者相手に手を抜きましたね?」
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