致命的なミスと味方の存在

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致命的なミスと味方の存在

「大事なモノが要らなくなる時か。そうだね」と上原は言い、上を見上げた。「う〜ん。古くなったり、壊れたり、もっと良いものが手に入った時かな。でも、僕は捨てられない性分だから、押入れに入れちゃうんだよね」 「そうですか」と言い、冴華は給湯室を後にした。もう振り絞った勇気は残っていなかった。 「あっ!勅使河原さん!待って。給湯室、もう空くよ!」と上原の声が聞こえて来たが、冴華には殺人鬼の呼び声に他ならなかった。悲鳴を上げなかっただけ、かろうじて理性が残っていたと言える。  席に戻った冴華は自分が致命的なミスを犯した事に気がついた。  それは上原の次のターゲットになるという事だ。殺人鬼が犯行に気がついた者を放置する訳が無いのだ。  冴華には可愛いお嫁さんになるという幼い頃からの夢があった。こんな所で死ぬわけには行かなかった。  1人でいたら殺されるかも知れない。けど、味方がいれば対抗できる。冴華は同じ営業一課の友人、大田絵梨花の事を思い出した。  絵梨花は白黒はっきりさせたがる気持ちの良い性格の娘だ。顔立ちも愛らしく、スタイルも良い。グレーな事を見つけると角の立たない言葉と鋭い視点で指摘をする。そして持ち前の愛らしさと抜群のスタイルで男たちを骨抜きにして真実と正義を勝ち取っていた。  彼女ならきっと味方になってくれる。2人で力を合わせて殺人鬼を追い詰めるのだ、そう冴華は思い、握りこぶしをつくった。
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