勅使河原冴華のスリリングな日常

共犯？

　絵梨花は仕事で行き詰まると上原によく相談していた。それは企画書の構成だったり、挨拶文の書き方だったり、他社との付き合い方だったり多岐に渡った。上原もそんな絵梨花を可愛がっていた。2人で残業している事もあった。
　今回の犯行は上原の単独犯じゃない。絵梨花も共犯なんだ、そう冴華は考えた。
　上原と絵梨花はすでに深い仲だったのだ。もっと良いものが手に入った上原は邪魔になった妻と息子を始末したのだ。まさにたった今、絵梨花は上原との犯行の後始末をしているのだ。犯行時刻を誤魔化す為の工作や、冴華では思いつかないあれこれをしているのに違い無い。そして一年後ぐらいに2人は結婚するのだ。きっと上原はいけしゃあしゃあと「妻と子を同時に亡くし、落ち込んでる僕に寄り添い、支えてくれた絵梨花さんと共に生きて行きます。2人の分まで幸せになります」とか言うのだ。隣には純白のウェディングドレスを着た絵梨花がいるのだ。きっとそれは純白じゃない。罪の赤で染まっている。
　冴華はスマホを取り出し、絵梨花に電話をした。当然だが出なかった。