18人が本棚に入れています
本棚に追加
映画は難解だった。
いや、ストーリィ以上に、時間軸を行ったり来たりし、パラドクスやレトリックがちりばめられた演出は、フィクション作品に慣れていない穂高には難易度が高かった、という話ではある。
ただ、主人公の後悔と嘆きの深さと透明度に胸が痛い。
しかし、核分裂どころかポツダム宣言さえあやふやだったので、ちゃんと彼に解説してもらおう、と穂高が横を向くと、
「えっ、かえで、ど、どうしたの!?」
両手で顔を覆う彼が。
顔面のつくりはもちろん、存在自体が優美な彼ではあるが、その手は男性らしく大きく、指も骨張っているのが、むしろアンバランスで好きだった。
などと余計な事を考えていると、
「……アインシュタイン先生にあんなふうに式を突っ返されたら、そりゃ生きていけないよな」
と、彼は呟いた。
最初のコメントを投稿しよう!