<9>Honesty is the best policy

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<9>Honesty is the best policy

 侑斗の寝室に初めて入った。クーラーをつけた途端ベッドに押し倒され、また丹念に胸を舐めつくされた。 「侑斗、侑斗…っそんなにしたら溶けちゃ、あ、あっ」  ごくわずかな力で熟した胸の果実を噛まれ、背筋がぞくぞくする。被虐趣味なんてないはずなのに、侑斗になら何をされても感じてしまう。  肋骨、腰、臍と道を描くように舌が這い、下着ごとベッドの下に放られる。太ももを持ち上げられそうになった時、思わず「ストップ」と叫んだ。 「…嫌か?」  暗がりの中、侑斗が存外自信なさげに尋ねる。 散々人の体を弄んでおいて、そんな表情を見せるなんてずるい。 「嫌じゃない。でも、俺だってお前に触りたいよ」  そう言って、舞紘より厚みのある裸の胸元に手をあてる。じっとりと汗ばんでいて、信じられない程鼓動が早い。 「お前が俺のこと、舐めたり噛んだりしたみたいに、俺だってお前のことたっぷり可愛がりたい…って、おい!」  腕を引きはがされ、無言のまま太ももを持ち上げられた。さらに、浮いた腰の下にクッションまで入れられて、さすがの舞紘も赤面をする。 「ちょっと!この姿勢はなしだろ!」 「悪い」  熱い息がダイレクトに足の付け根の昂ぶりに触れ、あ、と声が漏れそうになる。 「…駄目だ、興奮しすぎてやばい」 「それは有難いけど」 「今日は俺だけ触る。じゃないと、その…」  言いながら、サイドボードからチューブ状の何かを取り出す。 「…なんだよ」 「潤滑剤」 「じゃなくて!」 「……イキそうなんだ。くそ、言わせんなよ」  勿論、答えなど分かり切っていた。あえて言わせたのは、舞紘のプライドだ。  抱かれることに文句はない。だが、主導権を握られっぱなしというのも性に合わないのだ。 そして、もう一つ言いたいことがあった。 「…あのさ」 「うん」 「あっ!まだ、話、途中…あ、やだ、ああッ」  前触れなく、侑斗は舞紘の性器を口に含んだ。と同時に、後孔の蕾に潤滑剤をまとわせた指を押し当て、くるくると円を描くように撫で始める。 「あ、あ、すごい、侑斗…」 「…すごい、なに」 「気持ち、良い…っ」 「うん」 「あ、駄目、やだっ」  先端から窪み、その下の幹、さらに二つの珠まで、侑斗はあますとこなく舌で快楽を与える。舞紘が感じたポイントは決して見逃さず、意地悪なほどそこばかりを狙いもする。 「や、侑斗、侑斗、だめっ…で、出る…出ちゃう…」 「出してるとこ、見たい」 「く、口に出すの、やだあ」  涙を零しながら懇願する。 「チューしたいもん…口はやだ…」 「見るのは良いのか」 「うん、うん…っあ、ああっ!あ、んッ、や、あ!あ、あぁぁ…っ」  言葉に嘘はなく、侑斗は舞紘が達する寸前に口を離し、舞紘が体を震わせている間中ずっとその表情を見つめていた。指先は白濁した液を散らす鈴口を丹念に撫でまわし、文句をいうのもやっとだ。 「ばか、そんなすぐ触ったら…あ、だめ、だめだってばっ」 「ずっと想像してた」  精液と潤滑剤がまじった指が、僅かに後孔に埋められたのが分かった。 「ずっと、何年も…お前がイく時、どんな声出して、どんな顔するんだろうって」 「ん…っ」 「想像より、ずっとエロい。すごいよ。やばいかもしれない、俺」 「あ、侑斗待って、そこはちょっと、ゆっくりして」  思った以上のスピードで指が入り込み、冷や汗が滲む。 「…悪い、痛いか」 「痛くないけど。もし怪我して、二度目やる時にビビんのは嫌…あっ、だからって前は…ッ」  再び持ちあがった中心の、一番敏感な先端を撫でられて腰が跳ねる。いつの間にか二本目の指が内側から体をかき回し、違和感だけだったそこから微かな疼きを覚えるようになった。 「ん……っ、く、うー…」 「…どうだ?」 「……異物感は、ある」 「うん…」  曖昧な返事ばかりで、指は一向に動きが止まらない。こんちくしょう、と思いながら、はしたないほど興奮した。 ──ずっと俺にやらしいことをしたかった?想像よりずっとえろい?  最高だ。走高跳で表彰台に立った時と同じ、いや、それ以上の幸福だった。  これから先も一生、舞紘のことだけを考えていてほしい。他の人間に触れた記憶なんて、すべて忘れてしまえと思う。  宥めるような口付けでは物足りなくて、自ら舌を追いかける。 「こっち、触って……あ、それ、好き」  空いた左手を掴んで胸に導くと、望んだ以上の快楽を与えられる。  ベッドの中でも、多少の駆け引きはスパイスになると思っていた。でも、侑斗と触れ合っているとそんなことを考える余裕など一切ない。  爪に触れるだけでも熱いと感じるなんて、どうかしてる。でも、目の前の男が自分に欲情していると思うと、コントロールが効かなくなるのだ。  神経が焼き切れそうな程興奮している。気持ち良くて、愛しくて、たまらない。  侑斗も限界のようで、荒い息の中「いれたい」と懇願された。 「入れたい。舞紘、ぐちゃぐちゃにしたい」 「ん、うん…っ」  腫れぼったくなった乳首から手が離れ、これ以上ない角度で開脚させられる。体が柔らかくて良かった、と馬鹿な事を考えていると、後孔の入り口に、猛々しい熱が押し付けられる。 「侑斗、ちょい待ち」 「……なに」 「やめるとかじゃないから」  不安げな瞳に、思わず笑みを零す。  首に腕を回し、互いの額をくっつける。侑斗の汗が、舞紘の頬を伝って流れていく。 「…あのさ」 「うん」 「瀬名さんに教わったやり方で、抱くのはナシな」  至近距離でも、侑斗が呆けた表情をしたことが分かった。そのままがっくりと項垂れ、強い力で抱きしめられる。 「…なんだよ、それ」 「だって!お前、あの人から男同士のヤり方教わったんだろ」 「そうだけど、今持ちだされても」 「嫌なんだから仕方ないだろ!」  足をばたつかせて抗議すると、「エロいからやめろ」と諭される。 「分かった。…分かったって言うのも変だけど。大分前のことだし、詳細に覚えてるわけじゃないし」 「オリジナリティー出せよ」 「証明の仕様がねぇだろ」  啄むようなキスの合間に聞く言い訳は、そう悪いものではなかった。 「でも、体位くらい覚えてるよな」 「………忘れた」 「嘘つけ!」 「ほら、息、吐いて。力抜いてて…」 「うぁ…っ」  ぬるり、と先端が入って来る。 (固い、太い…っ)  内臓を押し上げられるような感覚に思わず顔を顰めた。 「う、内側も…っ気持ち良いとこ、あんの…?」 「ある」  断言されたが、今一つ信用性に欠ける。だが、侑斗の眉間の皺が色っぽく深くなるにつれ、まあ良いかと思えた。  ここまで散々気持ちよくしてもらったのだ。もし快楽を得られなくても、気合で乗り切ろう。 「やばい…めっちゃ、良い…」 「俺はあんまり…」  正直に打ち明けると、侑斗は舞紘の腰を掴む角度を僅かにずらした。 「あぁッ!」 「あった」 「え、やだっ待って…あ、やぁ、ああっ!ふ、んっ、あ、あぁっ」  今まで感じたことのない疼きが内側からせり上がって来る。上限のない快楽に追い立てられ、甘い声が止まらない。 「あぁっ、んっ、あっ、侑斗…」 「あー、やばい、マジやばい…ッ」  いつの間にか、侑斗のすべてが体内に収まっていた。侑斗は舞紘の腰をしっかりと掴み、粘っこい水音を立てながら穿つ速度を上げる。 「これは?舞紘、これ気持ち良い?」 「うん、それもっと…ッ、あ、駄目、一緒はやだぁっ」  蜜を零す性器を擦られながら強く穿たれ、過ぎる快楽に恐怖すら感じる。それなのに、心の真ん中には、もっとと叫ぶ自分がいるのだ。 「舞紘、すごいよ…もう俺、ほんと、やばい」  耳朶を甘噛みしながら侑斗が囁く。 「夢みたいだ…お前を、抱けるなんて」  その言葉を聞いた時、舞紘はすべての理性を手放した。 もういい。どれだけ淫らな姿を見せようと、ありのまま求めようと、侑斗は自分を受け入れてくれる。 こいつ以上に、俺を愛する奴などいるものか。 「…夢なわけ、あるか、あほ」  いつの間にか流れていた涙を拭い、広い背中を抱きしめる。 「侑斗、イキたい。…一緒に、イこ」  最後は、胸も、中心も、内側の融点も、全て触れられながら達した。  気持ち良くて、もっとしたくて、でも体中がくたくたに疲れ切っていた。
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