隻腕浪人と奴隷少女。

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第一話 『夜空の星の下で』 ここはとある世界。 様々な種族、動物や植物等が暮らしている世界。 近代化が進んでいるところも、 まだ発展途上のところもある。 だがこの世界にも腐っている人間はいるものだ。 未だに奴隷制度が続いている国も ある。だが、 どんな腐っている世界にも優しい人物はいるものだ。 そこは忘れてはならない。 『さて……今日はここか…』 現在時刻は午後4時の終わり際を指している。 今日、不知火(シラヌイ)カイトこと俺は、とある理由で闇市と呼ばれる所に来ていた。 『都市に行く為にここが近道と言ってもなぁ…ここが闇市だとは思わなかった…あの酔っ払いめ…』 周りの視線がこちらに集中しているのが肌で感じ取ることができた。 こういう場所では、身なりが良さそうなものに対しての追い剥ぎとかも頻繁に起きる。 その為、 身寄りが良い服等をしていると目につけられることがある。 『それにしてもこういう所には本当に色々ある……』 歩いている最中俺の足は少しだけ速度を緩めた。 目に止まったものがあったからだ。この世にも勿論奴隷商人はいる。 その為こういう闇市にも居るワケだが… 俺の目に止まったのは一人の奴隷少女だった。 首や手首、足首に縄を掛けられており、正座させられている。 髪はコーラル色で瞳は黄色の綺麗な目をしていた。 だが光がない。 まるで生を諦め たかのような目だ。 『……あ。』 今一瞬、こちらの視線に気づいたのか彼女がこちら側を振り返った時、目があってしまった。 見つめ合ったまま数秒が経過した。 そして俺は気づいたら奴隷商人の方へ向かっていき… 『なぁ旦那。 その子いくらだ?』 と、俺はコーラル色の髪をした少女を指差してそう尋ねた。 『…アンタ、ここら辺じゃあ見ねぇ顔だな…新参者かい?』 『それに、左腕に少し違和感がないか?』 商売人はそう言うなり、俺の左手に目をやった。といっても、もうそこに形作るものはないのだが。 『……無駄話はどうだっていい。 値段を聞かせてくれ。』 『まぁ聞かないでおこう...それじゃあ話を戻すぜ。こいつァ高い値で売ってる。 この不思議な髪の色と目の色。顔立ちも良いから、狙うのはわかるぜ。だが残念だったな。さっき王族の人がこの値段の3倍の額で買っちまった。 欲しい気持ちは分かるが止めとけ。 それが身のためだ。』 『それじゃあ俺はこの値段の4倍で買う。』 『……え?』 『……はぁ?』 奴隷商人と、その奥にいる一人の少女は、同じような素っ頓狂な声を出した。 『買い取るって言ってんだろ。 ほら。 金だよ。』 そう言って俺は金貨が入った袋を店主に向かって投げた。 『…確かに2倍の額があるが……話をちゃんと聞いてたか?あんた王族の連中に狙われる可能性があるんだぞ?』 『奴隷の商売人にしちゃあ親切なこったな。まぁいいや。そんじゃ貰っていくよ。』 そう言って俺は少女の縄を解いてから、歩き出そうとする。しかし、眼の前の少女は立とうとしても立てないらしく、足を震えさせていた。 無理もない話だった。あんな足までも縄に縛られている状態で、すぐに立てというのも酷だろう。 俺は足を折り曲げ、屈んだ状態で少女の方を見やり、顎で促した。少女は戸惑いながらも、俺の背中にしがみついた。 (『軽っ……。』) 予想外の軽さに驚きながらも、俺はその少女を背負いながら歩き出した。 しかし不思議と気分は高揚しており、この先が楽しみになっていた。 『……さて、予定変更だな…どうなることやら。』 気づいたらもう夜は更け、空一面は黒と青で埋め尽くされていた。 闇市を抜け出して美しい星々が舞う夜空を見ながら俺は誰となくそう呟いた。
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