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朝目が覚めて思ったのは、まるで掃除をしていない水槽のようなにおいがするな、だった。
生臭いような、何かが腐ってるような、もしくは藻が生え放題の水の中に入ってしまっているような、そんな匂いで目が覚めたので、勿論、目覚めは最悪だった。
ひとまずいつもの日常と変わらない時間に起きた私は、家の様子を見た。
まず、バスルームから悲鳴が聞こえた。
母だ。
母は夜型の仕事が多く、朝にシャワーを浴びることが殆どだ。
どうやら、そのバスルームで得体のしれないものが出たらしく、それで叫んでいるようだった。
その叫びは最早言葉になっておらず、悲鳴、という言葉で十分だと思う。
ただ、凄く五月蠅かった。
そして、においの原因は主にそこからのようで、ひとまず近づきたいとは思わなかったので、私は様子を見ることはやめた。というのも、バスルームの閉まっている扉の下から小さい何かが這っているのが見えたから、あまり視界に入れたくないあいつかもしれないと思ったのもあった。
次に悲鳴が上がったのは、洗面所だった。
覗き込むと、毎朝髭を剃っている父が剃刀を片手に蛇口を必死に閉めて「なんだこれ!?なんだこれはぁ!?」と素っ頓狂な声を上げていた。そんな声を上げている男の人事態初めて見たので少し新鮮だったが、洗面所の土台から何かが数匹這い出てくる様子が見えたからすぐに見るのをやめた。
そしてさらにさらに悲鳴が上がったのが、トイレだ。
「なにこれ!?やだ!流れない!?どうしたらいいの!?いやああああ!」
妹だ。
なんだかこちらの方が深刻そうだが、一番見てはいけない場所な気がした。
そうして私の頭の中で、なんとなく、水が出てくる場所がやばいのだろうか、という結論にたどり着いた。
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