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俺とジイさんが初めて会ったのは……冬の終わりだったかな。
あの日俺は腹が減って仕方なかった。朝からメシを探し回ったのに、昼過ぎになっても何も食えなかったんだぜ。
昔はなぁ、そこら辺に食べ物がたくさんあって食べ放題だったのが、最近じゃあ、死なないように食っていくのがやっとだ。おかげで他のカラスは山や林に移住しちまった。この辺りに残ってるのは俺一羽だ……。
おっと、話が逸れちまったな。
まぁ、とりあえず、俺は河川敷でメシを探そうと思って、飛んでいたわけだわ。昼飯食ってるやつがいるかもしれないだろ。そしたら、ジイさんが河川敷でなんか食ってるのを見つけたのさ。あわよくば、なんかくすねてやろうと思って、近くにとまってジイさんをじーっと見てたわけだわ。
そしたら顔を赤くしたジイさんが、俺に向かって
「おい! ダイゴロウ飲むか?」
って言いながら何かを差し出してきたんだよ。
『食べ物かっ!?』って思って、喜んでジイさんに近づいたら、ジイさんの手には水が入ったコップが握られていたんだ。「何だ水か……」とガックリきたよ。でもまぁ、何もないよりマシかと思い、その水を飲んだんだ。そしたら、びっくらこいて、思わず、
「カァーーー!!!」
と声を上げちまった。
なんとな、これが水じゃなかったんだ! 酒っていうモノで、一口クチバシに含むと体中がブワァっと熱くなる。でもって、ふわふわ気持ちよくなってくるんだ。
「かぁ~」
ってマヌケな声を出したら、爺さんがケラケラ笑って、
「お前、カラスなのにイケるくちだなぁ!」
なんて言ってきた。そして、
「ほらほら、もっと飲め飲め。これも食え」
って、酒や食べ物をくれたんだ。俺、せっせと酒を飲んでたら、ジイさん、
「お前はダイゴロウが好きなんだな。……よしっ‼ お前は今からダイゴロウだ! ガハハハハ」
って笑ったわけよ。そういうことで俺はダイゴロウなんだ。
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