告白

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告白

 伊織君と私は、向かい合って少し離れて立っていた。  彼は気持ちを決めたように、ゆっくりと話し始めた。落ち着いて話そうとしているのが手に取るように分かった。 「翔太とは親父同士が学生時代からの親友で子供の頃から知ってたんだ。彼の父親は食品会社、家の親父はアパレル会社の社長だったから、いつも周りから御曹司とか、そういう目で見られてた。だから気持ちは分かったし高校までは学校も違ったけど一番信頼出来る友人だった。  大学で一緒になって本当に親友だと思った。あいつには何でも話せた。大学を卒業して翔太は父親の会社に平社員として就職した。社長の息子だからって能力が無ければ社長になるべきじゃない。あいつはそう言った。たくさんの社員とその家族の生活を守っていけるだけの人望も手腕も必要だからって。  僕は親父の会社を継ぐのが嫌で大学でも建築を学び卒業したら外国へ逃げ出した。広い視野を持つのは良いことだと初めは援助もしてくれた。それじゃいけないと思ったから行く先々でバイトして自分の力で世界中を見て回った。  でも結局ただ目の前の現実から逃げていただけだった。  三十歳になって、いいかげん戻って来いと呼び戻された。会社を継ぐために親父の傍で仕事を覚えろと言われた。  その最初の仕事がファッションビルの新規オープンの仕事だった。  そこで藤村さんに出会った。プレゼンが素晴らしくて負けたと思った。大学で建築を勉強したくらいで外国の建築物を見て周ったくらいで何でも出来ると思い込んでいた自分が恥ずかしくなった。  初めて本気で仕事をしようと思った。アパレルではなく建築の。親父を説得して会社は既に常務取締役の姉貴に継がせて欲しいと頼んだ。  僕が本気なのを分かってくれた親父は認めてくれた。三十歳も過ぎてから、一から始めようとしている僕を。  藤村さんに出会って僕は変われたんだと思う。本気で生きる事を教えて貰った。本当に感謝してる。  翔太が結婚するって聴いて久しぶりに一緒に食事した。彼女が一つ年上だって聴いて相談したんだ。僕も会社の先輩が好きなんだけど相手にもして貰えないって……。  そしたら次に会う約束をした時、美耶子さんも連れて来た。美耶子さんは僕の話を聴いてくれて 『男の気持ちに鈍感な女って居るのよ。私の友達にも居るから。みんなの憧れの男の気持ち全部持って行って気付いてないの。披露宴に来てくれるから紹介するわよ』って。  まさか、それが藤村さんだとは思わなくて慌てたよ。僕は藤村さんの友達に相談してたんだって……。  きょう、ここで藤村さんに会って、すごく綺麗で見惚れてた。やっぱり絶対誰にも取られたくないって思った。親父が言ったみたいに、このままここで結婚したいくらいに……」  伊織君が私の目を優しく見つめながら……。 「藤村さん。あなたが好きです。初めて会った時からずっと」
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