愛する異星人

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愛する異星人

「僕の第一印象が最低だったのは、よく分かっています。あなたに認めて貰える男になれるよう頑張っていくから。とても足元にも及ばないのは分かっているつもりです。でもいつか近い将来、必ず追いついてみせます。だから僕と結婚を前提に付き合ってください」  伊織君の澄んだ目が、あまりにも真剣だったから私は何て答えたらいいのか分からなくて俯いてしまった。 「確かに伊織君の第一印象は最悪だった。何て奴だろうと思った。でも家の会社に来てからは、いつも真剣で真面目で一生懸命だった。それは良く分かってるつもりよ。同僚の一人として今では信頼してる。私、伊織君より一つ年上だし、あなたが想ってるような女じゃないかもしれない。それでも良いの?」  顔を上げて伊織君を真っ直ぐ見つめていた。  安心したように、すごく嬉しそうに笑ってくれた。少しずつ私に近付いて、そっと抱きしめられた。 「愛してる」  頭の上から伊織君の声が聴こえる。 「披露宴のテーブルで大学時代の同級生ばかり八人で座ってた。二人は結婚してるんだけど独身の奴らが藤村さんが良いって。もう結婚してるのか気にしてて、二次会で声を掛けようって相談してるんだ。どうしようって正直慌てた……」  伊織君の腕の中で思わず笑った。 「その二次会のレストランに行かないと。美耶子たち待ってるから」 「うん」  そう言うとそっと腕を解いて彼は柔らかく微笑んだ。  二人でゆっくり歩きながら、それでも直ぐにレストランに着いた。会場はもう既にそれぞれが気の合う仲間や、きょう出会って気になっていた人と話も弾んでいたようだった。 「未緒、こっち」  美耶子から声を掛けられた。伊織君と二人で行くと……。 「ちゃんと告白出来た?」 「はい」  と伊織君。 「次の結婚式は未緒かな?」 「ぜひ、そうしたいです」  って伊織君は少しハニカミながら言った。  綺麗なオレンジ色のカクテルを受け取って二人で乾杯した。 「未緒、とってもお似合いよ」  瞳も留美も千夏も笑顔だった。  伊織君の友人が何人か近付いて来る。 「伊織、ちっとも来ないと思ったら抜け駆けか?」  そう言いながら、みんなの彼を見る目はとても温かかった。  和やかに、とても穏やかに幸せな時間が少しずつ進んで行く。私達の時間もそうありたいと願っていた。  そして一年後……。  私は異星人と共に生きていくことを決意していた。  いつも隣で穏やかに笑ってくれる、優しく包み込んでくれる、柔らかな眼差しを向けてくれる、愛する異星人と……。      ~~ 完 ~~
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