美耶子

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美耶子

 バッグから携帯を出して美耶子に電話を掛けた。 「美耶子? 私」 「未緒、久しぶり。元気だった?」 「元気よ。今、招待状受け取ったから。おめでとう」 「ありがとう。ごめんね、相談もしないで」 「何言ってるのよ。ところで忙しい? 時間取れないかな? ミセスになっちゃう前に一緒に食事でもしない?」 「私も電話しようと思ってたんだ。いいわよ。私はいつでも」 「じゃあね、来週の木曜日はどう? 七時ぐらいには終わると思うから」 「木曜ね。分かった。どこにする?」 「そうね。この前行った個室ダイニングバーは?」 「あぁ、あの夜景の綺麗だった店ね。いいわよ」 「じゃあ、予約を入れておくから。木曜にね」  そして木曜日……。久しぶりに会った美耶子は、とても綺麗になっていた。元々美人だったけど。 「やっぱり恋してる人は違うわね。女の私が惚れ惚れするくらい綺麗よ」 「美緒ったら何言ってるの。そんなことないわよ。さぁ、きょうは飲むわよ」 「いくらでもどうぞ。飲み放題の女子会プラン予約しといたからね」 「さすが未緒。良く分かってる。気が利くのよね。じゃあ乾杯しよう」  お料理も次々に運ばれて来る。二人だけの個室で夜景を眺めながら落ち着いて話も出来るし、思いっきり飲めるし女子会最高。 「う~ん、美味しい」  美耶子の飲みっぷりは見てて気持ちが良い。 「ところで、どんな人なの? 美耶子の彼って」 「普通の人よ。食品会社に勤めてる」 「お医者様じゃないの? 美耶子のお父様外科医でしょう?」 「だから医者だけは嫌だったの。病院は兄貴が継ぐし。まぁ、父は医者と結婚して貰いたかったみたいだけどね」 「そうなんだ。歳は? いくつ?」 「一つ年下なの」 「そうなの。でも今時年下なんて普通でしょう? 十歳とか十五歳年上の奥さんだって居るくらいだもの」 「まあね。ところで未緒は? 今、付き合ってる人は?」 「いないわよ。仕事が忙しくて、それどころじゃないわ」 「仕事は仕事でしょ。恋愛も必要よ。誰か居ないの?」 「いません」  いないものは、いないとしか言えない。 「そういえば、彼の大学時代の友達なんだけど、職場の先輩を好きみたいでね。でも全然相手にもして貰えないらしくて……。アパレル会社だったかな。有能なデザイナーとか言ってた。仕事でも足下にも及ばないから告白も出来ないって悩んでるみたいよ。好きなんだったら気にしないで告っちゃえばいいのにね」
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