prologue

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 落ちこぼれ魔術師ジュリア=パニーク(16)の学園生活はとある同級生の心ない中傷から始まる。学園の門につけた馬車から降りるや否や、今日もソレは始まった。 「やーい! 魔力5歳児ー! 来る学校間違えてないか? 隣の初等学園の先生が待ってるぞ!」  ジュリアに絡んできたのはミニスター=ジェファーミン(16)。この魔法王国の中流貴族であり、パニーク家の決めた彼女の婚約者である。金髪のツンツン頭に青磁の瞳、細身ながらも鍛えられた身体の青年である。喋らなければ悪くない容姿をしているが、そう称される者の多くは口を災いにして全てを台無しにしているものである。 「あら、ミニスター。5歳児は初等学園に通えないのよ。6歳からだって学ばなかったのかしら? それとも、ミニスターは愚かにも初等学園に通っていた頃の年齢も忘れてしまったのかしら」 「あ、相変わらず口だけは一丁前だな!」  このようにしてミニスターは毎朝ジュリアに構いに来る。目的は勿論、ジュリアのその日の制服姿をその目におさめるためである。  朝日に照らされた黄金の髪。紅のリボンでポニーテールにされたソレは凛として美しく、意志の強そうなルビーの瞳が今日も一点の曇りなく輝いていた。赤を基調とした金の刺繍の上着に白のズボンが眩しい。  彼女のことを知らない初対面の者であれば、まさか彼女がこの学園で1番の落ちこぼれだとは信じないだろう。
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