VII

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VII

(遠隔操作アンドロイドでなければやられていましたね)  その頃、マルコは無傷で隣国に向かっていた。  無傷、それは傷ひとつなく、元気な状態のことを指す。マルコ•ディディルは隣国キカ•イースの敏腕スパイであった。  彼はとある使命のため、わざと冷戦状態の隣国の奴隷として捕まり、ジュリアの教育係へと潜入していたのである。そしてキカ•イース国の技術で作り上げた遠隔操作アンドロイドを使いながらジュリアの【パニーク】を受けるなどしていた。 (当主であるメッゾ=パニーク伯の【パニーク】は流石に受けきれませんでしたか)  マルコは早々に自国に帰る必要があった。そのため、わざと死ぬことにしたのである。証拠隠滅のため、狂ってしまったアンドロイドの身体を燃やした後、川に流すなど諸々の手筈も上手くこなしている。 (まさかジュリア様に正体がバレるとは)  ジュリアを慕っている皆々はジュリアの倒れる前の言葉を丁寧にマルコに伝えた。 《マルコに大事な話がーー》 (大事な話ーースパイがバレた以外に思い浮かばないですからね)  マルコは恋には鈍感であった。
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