VII

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*  マルコは鉄の車を駆使し、二日を掛けて故郷の開発施設に舞い戻った。  大きな鏡のような機械の前に立つと、自然と過去のことが思い出される。 *  未来予測機が8年前に見せた未来はこうだ。  《ジュリア=パニークが世界をパニックにして滅ぼす》  鏡に映されたのは、キカ•イース国と魔法王国が戦争中でこう着状態になっている中、一人の薄汚い少年のような少女が世界を滅ぼす魔法を唱えている図。中心に居るのはーージュリアだ。  この未来ではジュリアが16歳の誕生日を迎える日、ジュリアが世界を滅ぼした。  ジュリアは今よりも魔法が使えず、落ちこぼれの彼女に目を掛ける者は誰も居なかった。それ故に彼女は世の中を憎みながら一日一日を過ごしていたという。  戦争が魔法王国の劣勢になった頃、国王は古の伝説に頼り、最強魔法【パニーク】の使い手であるジュリアを戦場に引き摺り出す。  しかし、野生児であるジュリアを気にかける者は居らず、戦場でもそれはそれは酷い目に遭う。不衛生な食事、理不尽な暴力。何もかもがジュリアを傷付けた。 『この世界の全てを混沌に突き落としてやる』  ジュリアはこの世界への憎悪を更に深めた。ジュリアの16歳の誕生日、彼女は今までの人生を取り戻すかのように急に魔法を使えるようになり、全ての魔力を込めた【パニーク】を使った。  それは魔法王国もキカ•イース国も一瞬で取り込み、全世界へと広まった。ある者は発狂し、ある者は動悸が止まらなくなり、正常な生命活動を行える者は一人も残らない凄まじい有様となるのである。
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