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 ジュリアが落ちこぼれと呼ばれる所以は、魔力が非常に少ないところにある。  ミニスターの言う通り、ジュリアはこの魔法王国の子供であれば誰だって作れる掌サイズの火球でさえ作ることが出来ない。  しかし、ジュリアには最強の魔法を習得する資格があり、その必要性があった。 *  最強の魔法【パニーク】。  それは、成功すれば剛健な剣士であろうと、冷静沈着な賢者であろうと、はたまた高度な魔術を使いこなす魔術師であろうと、精神に異常をきたし忽ちに戦闘不能に陥る恐ろしい闇魔法であった。  実際に200年前の領土大戦で、ある男が敵方の高名な魔術師が大魔法を放つ絶体絶命の瞬間を【パニーク】一つで抑え込んだ話は余りにも有名である。混乱した敵の魔術師はそのまま大魔法を己に放ち敵は絶滅したという。  当時、【パニーク】を極めたことを国王に認められ、パニークという家門を興すことになったのは、ダルメシアン=パニーク。  以来、【パニーク】は秘伝とされ、その継承者は国の厳正なる監視下に置かれたのである。 . . .  ーージュリアの父の代までは。
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