II

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 昨日はジュリアの15歳最後の日であった。  翌日には16歳。この国の成人である。  大通りを歩くジュリア。祝祭日にも関わらず、ジュリアの顔は俯いたまま。街中は活気に満ち、催し物にあふれているが、どれもジュリアの瞳には映らない。  ジュリアは魔術こそ劣っていたが、それ以外の礼節や武術、学問は人並み以上、いや大人も顔負けな程であった。  しかし、【パニーク】が使えないことで父からは失望され続けている。  《もう一回でも良いから16歳までに【パニーク】が使えるようになってくれ。後生だ。もう成功したら何でもお願い一つ叶えちゃうから》  父にそこまでの言葉を言わせたのに、ジュリアは一族の魔法【パニーク】を使いこなすことができなかった。 (私が、不甲斐ないばかりに)  ジュリアは漁師御用達の店で一番強いロープを買った。用途は言うまでもない。一族の恥を晒す前に己のけじめは己でつけるべきだと考えたのである。  馬車で広大なパニーク邸に戻る頃、ジュリアは心を決めていた。出迎えのメイド達の顔すらまともには見られない。
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