6月11日 明日から梅雨

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6月11日 明日から梅雨

『明日から全国的に梅雨入りが始まります。今年の梅雨入りは──』 大根のお味噌汁を飲みながら、朝のニュースを聞き流すと、父さんの声が耳に入る。 「ここの移住支援制度の助成金は破格だし、思い切って転勤をして良かった。転勤先も人が良くて、なんとかやっていけそうだ」 「まぁ。それは良かったわね。私もね。ご近所様にご挨拶しに行ったら、逆にお土産渡されるぐらいで。上手くやっていけそうよ」 お母さんの明るい声。 お父さんと違ってパクパクと朝ご飯を食べ終え、早くも食器を片付けたがっているのは、都会の家とも変わりない。 そんな様子を見て、この家はこの村に馴染んでやって行けそうだと思った。 お味噌汁のお椀を置いて、最後まで取っておいたベーコンと半熟の目玉焼きに箸を伸ばす。 横を見るとお父さんも同じように皿の上に残った、半熟卵の黄身を潰して。少しソースを垂らしていた。 僕は醤油派だ。 「そうそう、職場の人に教えて貰ったんだが、この村では梅雨入りの時期。雨が上がると人が消えるらしい」 「へぇ。私もそれと同じこと事を聞いたわ」 醤油を垂らしながら「僕も聞いた」と、会話に混ざれば、二人とも。 そう言う村だから仕方ないかと、さらりと答えた。 僕もそう思った。 明日から梅雨入り。 都会でもここでもじめっとした空気は変わらないだろう。そう言うときはクーラーをガンガンに付けて、ソシャゲするのがベストだと思いながら、黄身に醤油を少し垂らし。 ベーコンでくるっと包んだ、半熟卵を頬張るのだった。
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