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6月12日 梅雨入り
今日から梅雨入り。
昨日はそこまで感じなかったジメジメ感が一気に、襲ってきたみたいな日だった。
雨も思いっきり降ればいっそ、清々しいのに。ジトジトと空から恨みがましい涙を流すような雨。さらには重く落ちて来そうな、灰色の雲が鬱陶しさを倍増さていた。
今日も学校を無事に終えて、帰宅し。
じっとりしたTシャツを着替え。新しいシャツに袖を通して、濡れてしまった靴下を脱げば少しはサッパリする。
そのまま自室でお母さんが帰って来たら、夕飯の手伝いをしないと行けないから。
それまでは自室の二階でクーラーを付けて、無料配信の漫画でも漁ろうかと思った。
クーラーを付けて、ベッドに寝転ぼうとした瞬間。
あの頭の中の違和感。ざぁーっとした音が響き。
体をびくりとさせてしまい、部屋の窓の外に何か動くものを見た。
「ん? 今のなんだろ」
ここは二階で、窓から見える景色は木々などはなく。殺風景な電信柱と向かいの空き家という、つまらない風景ぐらいしかない。
窓の向こう側に動くものなんか、鳥ぐらいしかない。
しかも、今日は雨なわけで。
「鳥って雨だったら……飛ぶのかな? あまり飛ばないような気もするけども」
窓際に近づくが、雨粒がガラスをビチャビチャと伝うだけ。このガラスを伝う、雨つゆの動きを何かと見間違えかと思い。視線を向いの空き家に戻すと。
ひょこっと。道を歩く背の凄く高い。電信柱と同じくらいの高さの。白い布を被ったものが居た。
それはスキップをするかのように上下しながらゆっくりと、右から左に移動していた。
同時に頭の中の雨音も強まる。
まるで体の中に雨が降っているよう。
「つっ、頭が……って、あれはでっかいテルテル坊主?」
テルテル坊主とは言ったが、頭のところは紐で縛られていて頭部の形を成している訳でもなく。
ただ、小さい子供が白いシーツを頭から被って「オバケだぞ」と、言ってる雰囲気が近い。
そんなテルテル坊主もどきは、何かの仮装なのか。
めちゃくちゃ背の高い人の雨ガッパなのか。
なんだか、よく分からない。
とにかく、テルテル坊主もどきはゆっくりと移動していた。足元も非常に気になったけど、この二階からでは足下まで見えない。
そのまま、じっと興味津々でテルテル坊主もどきを見ていると。
テルテル坊主もどきはゆっくりと雨の中を移動して、やがて視界から消えて。いつの間にか、頭の中の音も消えていた。
消えた後ハッとして。妙にふらつく頭を抑えながら、今のは一体と思いながら素早く窓を開ける。
濡れるのを承知で窓から身を乗り出して、テルテル坊主もどきを確認するが。
「いない……」
雨の中。テルテル坊主もどきは煙のように消えていた。
ポツリと呟いた言葉も雨の中に消えて行く様で、そのまま身動き出来ないでいたけど。頬にあたる雨粒にはっとして、部屋に引っ込んだ。
夢を見たのだろうか。それとも変な雨音のような頭痛のせいか。
結局、意味が分からず。この後、気を取り直して漫画を見ても。ちっとも頭に内容が入って来なくて、ぼんやりとベッドから窓を眺めていた。
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