6月14日 雨が上がる

1/1

19人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ

6月14日 雨が上がる

梅雨入りと言っても、雨は上がる。しかも今日は一日からっとした良い天気らしく。 お母さんが朝から、庭に洗濯物を干してご満悦だった。 お父さんと僕は傘を差すのは荷物が増えるので、久々に両手がフリーと言うのは、歓迎と言う気持ちだった。 あのテルテル坊主もどきは、ちょっと説明がしにくく。誰にも言って無かった。 あれが幽霊とか言われるのも、なにか違う気がしたし。 学校の友達に変だと思われるのも嫌だから、ここは黙っている一択かなと思った。僕の見間違い説も捨てきれない。 だから。もし、次見かけたら誰かに話してみよう。そんな感じだった。 そんな訳で、今日もいつものように変わらず。 朝食を食べ終えて学校に登校するだけ。 家の外に出ると、雨上がりの道路は水の湿った匂いが充満していた。 まだジメジメとした空気が、道路にうずくまっているような感じがしたけども、朝日が清々しいのでまぁ、許せると思いながら。 水溜りを避けて学校に登校するのだった。 学校に着くと朝のホームルームがあり。 先生が教壇に立って、話し始めた。 「えー。おはようございます。今日は雨が上がりました。なので、カトウさんが居なくなりました」 カトウさんが居なくなった? ざわっと皆の動揺が広がる前に先生が「はい、ざわざわしない」と、牽制する。 「皆の気持ちも分かるが、今は梅雨の期間。雨が上がったから仕方ないだろ? な? 皆も承知の上だろ。今回はたまたまこのクラスから、居なくなっただけ。皆は気にしないように。むしろ、もう少しで夏休みが始まるから、その前にミニテストがある。先生はそれを気にして欲しいです」 「えっー」と言う戸惑いの声。 それはカトウさんが居なくなったから、なのか。ミニテストに不満なのか。僕には分からなかった。 ただ、カトウさんが居なくなったのは、僕も雨が上がったから仕方ないと言う気持ちと。 豪雨を見ているような、ざわついた気持ちが胸に広がりソワソワしてしまっていた。 すると、隣の席のサガミ君が手をぴっと上げた。 「はい、先生質問です。カトウさんが居なくなったので、図書委員は誰がしますか?」 「そうだな。質問をしてくれた人にやって貰おうかな」 「えっー、なにそれ。ずりぃ」 サガミ君は文句を言いながら僕を見て「先生ひどくね?」と、意見を求めて来たのでうんと、頷く。 すると、周りはいつの間にかクスクスと笑い声が起こっていた。 「ま、冗談だ。図書委員はまた、おいおい決めよう。カトウさんの席や荷物は後ほど市役所の人が回収にくるから、カトウさんから借りている物があったら、早めに先生に持って来て欲しい」 はーいと、皆の声。 先生はそれに一つこくりと、頷いて。 「よし。まだ梅雨明けじゃないから、こう言うことが、まだあるかもしれない。けど、気にしないようにな。よーし、授業始めるぞ」 と、いつも通り。 明るい声で授業を始めるのだった。 僕はまだ、胸騒ぎが落ち着かず。 傘を忘れて、止まない雨が降り続けている様な気持ちで。 カトウさんが使っていた席をしばらく、ぼんやりと見ていたのだった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加