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プロローグ(第一視点)
この世界では、火事が起こる時に火の蝶が舞う。
そんな非現実的なものが語られた本を掃除している時に見つけた。
その本は、著者もなければ題名すらない、この本をどこから持ってきたかすらわからない。だが、表紙には色褪せもしないほど魅力的である蝶が描かれていた。その蝶の羽は赤く、その蝶の羽は大きく、真っ赤な火をともしながら夜を飛んでいた。
そんな本を見た蜜花は、馬鹿馬鹿しいと心の中で思いながら、その本を本棚にしまった。
それから、掃除を終え、嫌いな父との夕食を食べて、お風呂に入って、一日を終えた。
その日の夢は、嫌なもので、嫌いな思いでだった。でも、その嫌にも慣れた。全部あいつのせいだ、しょうがなかったことも知ってる、もう手遅れだったことも知ってる、でも、あいつのせいなんだ。
今日は、母の二回忌だ。体が重い、頭が痛い、足はふらふらで歩けもしない。でも、いかなくちゃいけない、あの山に花を届けないとと、体を起こすと同時に、父が部屋に入ってきた。
父は私の服を用意してくれていたらしいが、青ざめた私の顔を見た途端に、私に近づき優しい言葉をかけた。でも、私はそれを突っ返した。
父は心配そうな目を私にやったが、そんなことはこの一年気にしたことがないし、これからも気にすることはない。そんなことを思っていると、父が先程のことを忘れたような声で言った。
「蜜花、今日はお母さんの二回忌だから、嫌なこともわかってるし、苦しいこともわかってるが、あの山に行こう。」
私はこくりと頷いた。
それからは、父と話さずに車に乗り込んだが、何も話さない時間は退屈だろうと暇つぶしも兼ねて、昨日見つけた本を持ってきていた。
この本を読み進めてわかったことは、この本の中では焼蝶と言う生物が語られていた。
一つ目は、火事の時に現れること。
二つ目は、誰かを助ける為に現れること。
三つ目は、誰かが犠牲になること。
この本を読み進めていると、いつの間にか眠ってしまっていた。
その夢は、今日の夢とまったく同じであったはずだが、少し妙なものだった。妙というのも少し、明るすぎる何かがいた気がする。
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